おはようございます。
マックの値上げに悲鳴です🙀
3月12日から価格改定となったマクドナルド。ネット上では「マクドも高くなった」との悲鳴が聞こえるが、では、“客離れ”は生じるのか……。
【画像11枚】マックの価格改定後の値段や、客離れが生じている「ココイチ」の価格はこんな感じ
■マクドナルドが12日から値上げを敢行
マクドナルドの値上げが話題だ。3月12日から、全メニューの4割が10〜30円ほど引き上げられたのだ。
例えば、以下のように商品の値段が変わった(いずれも税込みで地域によって変動あり)。
「ハンバーガー」:170円→190円
「マックフライポテト S」:190円→200円
「チキンマックナゲット 5ピース」:260円→290円
「ダブルチーズバーガー」:430円→450円
「炭酸ドリンク S」:120円→140円
一方で、ハンバーガー・サイドメニュー・ドリンクMのセットが500円(税込み)で復活するなど、お得感を押し出す戦略も同時に行われる。
ただ、かなりのメニュー数が値上げされるためか、消費者の間では「マックの値上げ」の方がイメージとして強く認識されているようだ。
【画像11枚】いつの間にそんな高くなった…「マクドナルド」価格改定の値段はこんな感じ
実は、今回を含めてマクドナルドは過去3年で6回の値上げを行っている。
もともと「サンキューセット」や「100円マック」などの攻めた価格設定で「デフレの王者」的なポジションにいた同社だが、それは過去の姿なのだ。
一方で、一般的に日本人は値上げに厳しい。では、今回の価格戦略で客足は離れるか。他のチェーン事情も踏まえながら考えてみよう。
■値上げをしても最高益のマクドナルド
今回の値上げについて、消費者からは「モスバーガーと同じぐらいの値段になったなあ……」「だったらバーガーキングに行こう!」なんて声も聞こえている。今回が特別なのではなく、値上げ報道があればこういった声は大なり小なり出てくる。
ただ、そのような反応をよそに、これまでのマクドナルドにおける値上げは客足に影響していない。同社はここ数年間、過去最高益を更新し続けているからだ。2023年12月期の営業利益は前年比20.9%増の408億円、2024年12月期の営業利益は前年比17.5%増の480億円でいずれも過去最高益。経常利益、純利益も過去最高を達成している。
客数を見ても、今のところ客離れは起きていない。2024年は、客数が前年同月を下回ったのは7月と12月だけで、前年割れする月も多かった2023年に比べると、むしろ「マクド回帰」が起きていたと言えるのだ。
かつてのマクドナルドの姿を知っていると、「とにかく安い店」としてイメージされがちだが、実は現在のマクドナルドは安いから行く店ではなくなっている。むしろ、値上げをしても選ばれる店になっているのだ。
■「インフラ」としてのマクドナルド
では、消費者はマクドナルドの「なに」を選んでいるのか。
確かに期間限定のハンバーガーなど、商品力もあるだろう。ただ、素材にこだわったモスバーガーや、サイズ感へのこだわりを見せるバーガーキングと比べるとどうしても商品単体では霞んでしまうのも現状だ。
「マクドナルド値上げ→モスやバーキンと同じ価格水準? 客離れ起こさない緻密戦略」(「Business Journal」3月11日配信)では、値上げを行ってもマクドナルドが選ばれる理由について、その圧倒的な店舗数を挙げている。
2025年2月におけるマクドナルドの全国店舗数は2985店。これは外食チェーン全体のトップで、当然ハンバーガー業界でもトップの数。次いで数が多いモスバーガーは1311店舗。ダブルスコアでマックが勝っている。
筆者は東京と香川で二拠点生活を行っているが、マクドナルドの強さは地方部に行くと顕著にわかる。簡単にいえば、地方の「インフラ」の一つになっているのだ。
例えば、香川全体では20を超えるマクドナルドがあるのに対し、モスバーガーは4店舗。個人の喫茶店などが減少している現在、マクドナルドで井戸端会議をするお年寄りも多く見かける。
それに都心部に比べれば少ないが、テレワークの普及も相まってマクドナルドで仕事などの作業をしている人も多い。マクドナルドでは全店でフリーWi-Fiの設置があるのもポイントだ。さらには勉強をする学生もおり、複数の層が店内に共存している様子が目につく。
さらに、マクドナルドに人が集まる大きな特徴が、いくつかの店舗で24時間営業を行っていること。
特にファミレスも24時間営業が少なくなっているいま、夜に若い人が集まる場所としてマクドナルドは格好の場所。地方の場合、大体が車で来るからアルコールも飲まないし、ちょうどいいのだ。
都心部に住んでいると見えないのだが、値段うんぬん……という以前にそもそもマクドナルドの存在は飲食店というより「公共インフラ」的な色彩さえ帯びている。場所としての価値があるのだ。
その点で(やや言い過ぎかもしれないが)「マクドナルドの値上げ」は「水道料金の値上げ」とか「ガス料金の値上げ」などと同じ意味を持っている……なんて指摘もできそうだ。
さまざまなものの値段が上がりつつある現在、値上げをしても、その店になんらかの価値を感じられるかが重要だ。マクドナルドの場合、その大きな要因が「場所」的な価値にある。
そう考えると、かつてのデフレ文化の中で生まれた「価格の優等生」的な店舗はなくなりつつある……といえるかもしれない(ちょっと悲しい話だが)。
そういえば、「餃子の王将」もここ2年で5回の値上げを繰り返しているが、今のところは業績は好調を維持している。
マクドナルドと人気の要因は異なるだろうが、その価格に納得感が得られれば、結局は消費者は足を運ぶものなのだ。
■とはいえ、消費者の体力とのせめぎ合いが始まっている…
というわけで、ここ数年のマクドナルドの受け止められ方を見ていると、今回の値上げについてもすぐに客足が減っていくとは考えづらい……が、しかしである。
他チェーンの動向を見ていると、近年の値上げがだんだんと消費者の経済的な体力に追いつかなくなっているのでは? と感じることも多い。代表的なのが、カレーチェーンとして知られるCoCo壱番屋だ。
同社は2019年あたりから断続的に値上げを行っていたが、その際に大きな客離れは見られなかった。「値上げの優等生」という異名も取るほどで「値段が上がっても食べたい店」だったといえるだろう。
■度重なる値上げで、いよいよ客離れが生じた
しかし、運営会社である壱番屋の2025年2月期第3四半期決算を見ると、2024年9月から11月の客数が前年同期比で4.9%減少している。第1四半期が3.1%の増加、第2四半期が1.5%の増加だったのに対し、2024年9月から客数の減少が始まっているのだ(月次の最新発表は2月までで、現在6カ月連続で前年割れをしている)。
この背景に「値上げ」があるとささやかれている。というのも、客数が落ち始めたタイミングと一部商品の値上げが同じタイミングだからだ。
この値上げでは、ポークカレー(ライス300g)が、東京都・神奈川県・大阪府で591円から646円と55円の価格上昇。その他の地域では570円から646円と76円の値上げになっている。
「値上げの優等生」として「それでも食べたい店」のポジションを取っていたCoCo壱番屋にとって、昨年8月の値上げが客足減の一つの分岐点だったと見ることができる。顧客が感じている「これぐらいだったら出してもいい」ラインを超えてしまったのだ。
そもそも、物価高や社会保険料の増加に対して賃金の上昇が追いついていない現状では、いくら企業の商品が「高くても欲しい」ものだとしても限界がある。企業が商品や店舗空間の魅力を向上させるだけではどうしようもなくなりつつあるのだ。
しかも、チェーン店の場合そもそも消費者の「これぐらいまでだったら出せるライン」は低めになっていることが多いから、このせめぎ合いの中で脱落していく(客に選ばれなくなっていく)チェーンも増えていくことだろう。
その点で、いくら数の面で他を圧倒しているマクドナルドでさえも、このままでは客足が離れてしまう可能性もぬぐいきれないのだ。
■そろそろ値上げの限界が見えてきたか?
CoCo壱番屋は、カレーが600円台に突入して客足が落ちてしまった。マクドナルドについては、どれぐらいまで値上げができるだろう? それは、人々がその空間や商品にどれぐらい価値を感じているかによる。
例えば、今はマックフライポテトのLサイズは380円だが、これが480円とか500円になると「ちょっと高いかも?」と個人的には思ってしまう。
もちろん、どこまで値上げ幅を許容できるかは人によって変わるから、一概にこうだとは言えない。いまだにマクドナルドは他社に比べれば安価な値段を保ち続けているし、場所としての価値を考えれば値上げ可能な額はまだ高いかもしれない。
ただ、そうした個々人の「マックならこれぐらい払える」という感覚が集まって、今後のマクドナルドの業績にその結果が反映されていくのだろう。そして他チェーンの動向を見ている限り、どうも値上げの限界にそろそろ近づきつつあるような気もする。
一方、このように値上げをした分についてマクドナルドは、従業員の賃上げ分に補填するとも発表をしている。そのような内需拡大のサイクルがうまく形成されるのか、それとも値上げの限界が先にやってくるのかーー。
失われた20年で形成されたデフレ文化が変節するかもしれないポイントに私たちが立たされているのは間違いないのである。
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